Z1,Z2からKZ900,Z1000のA2やZ1Rの1型に至るまで、純正で使用されているジェネレーターはインナーローターと呼ばれます。
エンジンに装着されて固定されているローター部分がコイルの内側にあるがゆえの呼称で、動いてる側が小さい為にエンジンのピックアップには優れるのですが、発電の為にある程度の回転が必要で低速域での容量が不足しがちな事と、外周に位置するコイルが大型になってしまう為に、以降の車両においてはステーターコイルの外側をローターが廻るアウターローター方式が一般的になりました。
とは言え、インナーローター方式でも正常に機能している限り公道を普通に走る為の充電力に不足があるわけでは無く、アイドリングでヘッドライトを点けたまま停車しているならまだしも、Z1を常時点灯させて街中をストップ&ゴーしながら走行してもバッテリー上がりは通常起きません。(余裕はあまりありませんが)
問題はこのローターが破損した場合です。
以前にも記事にした通り、Z系のインナーローターは長年使ったり無用な空ぶかしを繰り返すと、構成されているアルミの部分とベースとなっているスチール部分が分離して割れてしまったり、センターの固定ボルトが緩んで空回りしたりしてしまうと固定する為のテーパーが擦り減って適正に固定出来なくなってしまい、使用不能になる場合があります。
点火用の電源をバッテリーからの供給に頼っているZの場合、バッテリーに充電出来ないといずれ走行不能になりますから当然交換の必要があるのですが、オリジナルのローターは10数年も昔に欠品です。
それでもZ系エンジンは生産数がそれなりに多かった為、当社でも整備に必要な分の数量は何とか良品を確保はしてきたのですが、最近はそれも数が減ってきました。
それでも発電系が使えないといずれ走れなくなるZが続出する事になります。
そこで初期のZ系に付けられるローターは他に無いのかと言われれば、実はあります。
ローターの取り付けテーパー部分が現行車に比較すると非常に細い為、取り付け出来るものは滅多に無いのですが、日本の4大メーカーで数多くの種類製作された純正部品の流用で使用できるものがあったりします。
メーカー問わず様々な車両を触っていたりするメカニックや、一部のZ系マニアの中では昔からいくつかの種類が結構知られているものがあったりします。その中でも現在でも入手できるタイプのものがこれ。
ちゃんとウッドラフキーも使用出来ますので、Z1000系はもちろんZ1系にも付きます。
ローター単品として考えれば極端に高額なものではありません。
但し、アウター方式に変更した場合はステーターコイルも変更したりコイルのマウント方式の違いを対策する為のコストもかかりますから、中古でもZ用純正の良品ローターを何とか探す方が現実的であり事実我々もそうして来ました。
ただ、それが確保出来ないとなればこれを使う方法も考えねばならない時代になったのかという気もします。
Z系の純正インナーローターの場合の構成はこの通り。
ローターは小さいのですが、ステーターコイルが外周に位置するため、ジェネレーターシステムのサイズとしてはそれなりに大型です。
上のローターに対応出来るステーターコイルですが、実はMk2系のものが使えます。Mk2用カバーを使用すればコイル固定もボルトオンだったりします。Mk2系ステーターは販売終了品ですが、当社で扱っているDENSO製のものがそのまま対応しますので、試しに入れてみました。
ステーターはもちろんですがマグネット自体の性能もMk2系の純正より上な為、この組み合わせだと初期のZ系が後期のMk2系を大きく上回る発電容量を確保出来ます。なんかZとは思えない充電系ですが。
横から見たところの比較
サーキットを走ったり、それなりの攻め込みをする場合はジェネレーターカバーの路面へのヒットを避ける為に逃げ加工を施す場合があるのですが、外径の小さいアウターローター方式の方が、有利そうです。
ただし重大な問題がひとつ、現在新品で入手出来るアウターローターで装着可能な事が知られているものにはZで使用できるスターターワンウェイクラッチがそのままでは着きません。(別に知られている販売終了になったものではZ系の純正ワンウェイクラッチが装着可能なローターがありましたが)
従って、現状でこのアウターローターを装着する場合は、キックスターターで始動するか、カバーを加工してサーキット走行する様な燃える男の押しがけ仕様という事になります。
一般公道用に使用するのであればスタータークラッチを製作もしくは流用加工する必要があり更にコストがかかります。ただ上記にもある様に以前はコスト的に見合わなかったのですが、良品のインナーローターが入手困難であるという必要に迫られたり、バンク角の確保や充電や始動等の性能的なメリットの方が大きいのであれば実用化する意味もあるかも知れません。
どうせなら最近のカム式ワンウェイクラッチを使える様にするとかですね。