毎度言い続けてきた事なんですが、本当に車両の仕入れが困難になってきました。
Z1を例にすれば生産から約40年経過しているわけで、空冷Z全般にその数は減る事はあっても増える事はありません。しかし、例えばアメリカでのその数がゼロになってしまった訳ではなく、以前の様な数は望めなくとも、未だに細々と日本に里帰りしています。
ですから、正確には同じ金額で入手出来る車両のコンディションが著しく落ちたわけです。以前なら100万円で買えた車両が、今同じコンデョションを望めば必然的に150や180なんていう価格になってくるわけです。
また、米国内でもネットオークションが浸透し、以前の様に納屋で眠っていたお宝を価値を知らずに手放す・・・なんていう妄想は夢物語に終わります。
さて、良質な車両が激減した上に価格は高騰しているわけですから、当然コンプリート製作に使用するベース車両の入手も難しくなってきます。割と耳にすることなんですが「どうせ一から仕上げるんだから、ベースはボロくても良い。あくまでも安さが優先」というものです。確かに同じ作業内容であればベース価格が安い分、最終的に乗り出し価格に反映されますから間違いとは言えません。
しかし飾り物ならともかく、乗って楽しむZという事であれば少々事情は変ってきます。上記した「ボロくて安い」車両は、どこまで言ってもボロいんです。フレームの状態、Fフォーク・ボトムの磨耗、クランクやシリンダーヘッドの消耗具合は度を越すと本来の性能への再生は不可能です。これらは同じ作業を施しても、その後の耐久性や乗り味に直結してきますし、出来れば少々外装やフレームまたはスポーク等に軽度のサビが発生していても、バイクの幹となる部分はシッカリしている物を選びたいわけです。「フルレストア」すればどんな物でも新車の様に・・・はある意味幻想だと言っても過言ではないと思います。
現在、弊社では本当に数を絞らせて頂いた上で限定的に車両製作をお受けしていますが、正直目に適うベース車両を見つけるのに四苦八苦しているのが現状です。
画像は、昨日仕入れたベース車両でZ1Aになります。既に、先日お申し込み頂いたお客様分としての入庫です。遠方のお客様でしたので、早速画像にて詳細をお伝えすると、気に入って頂き製作のGOサインを頂いたところです。
バッテリーボックス周辺やスイングアームの付け根付近にはお約束とも言えるバッテリーの硫酸ガスによる腐食が認められるものの、過去に致命傷となる様な事故を起した痕跡等はフレームにも見当たらなくガセットやストッパーも健全、シートとマフラー以外99%オリジナル状態で下手な化粧直しが施された様子もありません。タンク・サイド・テールと外装は全て当時のオリジナルペイントで、少々日焼けはしているものの、特にタンクに関しては塗りなおすのが勿体無い位の状態を今でも保っています。勿論始動も確認済みです。
正直、このまま前後のスポークを張り替えて、ちょっと磨き上げてあげれば、そのまま店頭に並ぶ上質なUSED新規車両としても十分通ってしまうと思います。解る人ならキャブレターのキレイさや色艶でなんとなく想像はつくのではないでしょうか。
一からの製作ともなれば、それなりに個々のオーナーさん皆さんに強い思い入れや期待が膨らんで当然です。見た目だけではなく、乗って長く付き合って、そんな期待をずっと裏切らない車両に仕立ててゆくには、どうしてもベース車両のコンデョションに譲れない部分があるのです。