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Z系最終型カムクラッチスターター

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これは、始動時にセルモーターの動力をクランクシャフトに伝達するワンウェイクラッチとして1990年代初頭
頃のモデルより採用されているカムクラッチ。
イメージ 1
 
カムクラッチ以前のものはローラー式と呼ばれ、通常この様に3個のローラーが作用します。
カワサキだけでなく、他社メーカーの同時期の車両(CB-FやGSXも)全てこのタイプでした。
イメージ 5
 
Zをセルモーターで始動させる際に機能するワンウェイクラッチの構造と消耗については昔記事にしていますので、こちらもご参照ください。
 
さて、ローラー式の場合特に低回転時にはギアの当たり面の上をローラーが転がり続けている事もあって、アイドリングやストップアンドゴーの多い車両の場合、スターターの使用回数に関係無くクラッチハウジングも摩耗してしまいます。 
ところがカム式の場合、エンジンが始動するとカムが遠心力でハウジング側に広がる事でギア側からは浮き上がって非接触になりますから運転中の摩耗は起こりませんし、フリクション面でもローラー式より有利です。
(エンジンが停止すると、外周に巻かれた細いスプリングがカムを内側に巻きつける事でクラッチとして働く様になります。)
イメージ 2
 
エンジン停止時や始動時にのみカムが全周に渡って接触しています。
ローラー式なら3個の接触に対して、このカム式の場合は18個で全周面で当たります。しかも始動後は上記の通り、遠心力で浮き上がる為内側のギア側には接触しなくなります。イメージ 6
 
この様に容量のみならず耐久性面でも大幅に優れる為、特にワンウェイクラッチの耐久性が重視されるビッグスクーターでは早くに採用されていました。(何せスクーターは構造上押しがけが出来ませんから)
 
又、従来ローラー式を採用していた継続生産モデルでも90年代中盤を境にカムクラッチ式に変更される様になりました。
メジャーなところではザッパー系のゼファー750やGPZ900R等が含まれ、これらのエンジンをオーバーホールやチューニングしたり修理する際には、後期モデルのカム式クラッチを流用して容量や耐久性のアップを行うのは、結構知られた方法です。
 
では、Z系はと言えば少し遅れながらもやはり同様に対策され、2000年位を境にしてZ1000Pの最終型までのモデルではカム式クラッチに変更されています。
ポリスバイクは街乗りが基本でアイドリング時間も長い為にワンウェイクラッチの消耗も早かった筈で、生産台数も極々少ない末期モデルにも関わらず対策が望まれたのだと思います。
確実にセルスタートして一気にダッシュ出来なければ使い物になりませんから。
イメージ 3
 
さて、これを流用してやるとワンウェイクラッチの消耗に関してはまず気にする必要が無くなる程になるばかりか、圧縮等を上げたチューニングエンジンでもまず滑る事無く始動が可能になるのですが、一部のショップやプライベートチューナーが使っているのを除いては今一メジャーな方法では無いようです。
 
理由はと言えば、Z1000P用のカム式クラッチを使うには、クラッチが作用するギアはもちろん、ハウジングがマウントされるマグネットローターが異なる為にこれも交換の必要がある事です。
 
クラッチハウジングの形状の都合でマウントボルトの位置が外側になっているのがわかります。
イメージ 4
 
しかもこれが上記のザッパー系やGPZ900Rと違って日本国内ではローターのパーツが供給されておらず、普通にカワサキにオーダーしても”その品番の部品は存在しません”などと言われます。
この為輸入するしかないのですが、レート変動で価格が変わるのはもちろん、航空便で送るには割と重い部品ですから単品で手配すると送料が結構馬鹿にならないのがハードルになってしまうのでしょう。
 
もちろん、ギアやクラッチアッシのみならずマグネットまで交換となりますのでコストはかかりますが、この先何度もワンウェイクラッチを整備する事を考えると一考の価値がある場合もあるかも知れません。
写真の通り、先日記事にしたマグネット部分は6枚に分割された対策型にもなっていますので、マグネット剥離の修理の際に同時にカムクラッチ化を行っても良いでしょう。
 
左は初期の3枚タイプ。 右はカムクラッチ用の最後期6枚タイプ
イメージ 7
 
又、このマグネットローターはZ1000Mk2やFX1系のクランクにも装着は可能です。ジェネレーターカバーやステーターコイルもJ系に交換する必要はありますが、発電能力は比較にならない程向上しますし、ワンウェイクラッチの滑ってしまう高圧縮エンジンに使う場合もあります。
(マグネット構造の異なるZ1系には仕様不可です。)
 
たまにこのカムクラッチスターターについてはお問い合わせを受ける事があるのですが、ご興味のある人が多い様であれば入手し易くなる様に在庫もしようかと思います。

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