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シリンダースリーブの厚さによる剛性の違い

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これはシリンダーブロックより抜き取ったZ用の各種スリーブ。
Z1用純正ボアのもの、Z1000用を73mmまでボアアウトしたもの、当社で製作したスーパーターカロイ製スリーブ(内径71.5mm)
イメージ 1
 
Z1000用スリーブを73mmまで拡大と言うのは、各種ピストンメーカーでは一応適合範囲内となっていますが、実際そこまでボーリングするとスリーブ下端の厚さが大体1.2mm 
イメージ 2
 
上から見ると、一見大丈夫かなと思いたくなるほど薄いです。
イメージ 3
 
今までの経験上、この仕様になっているものでストリートレベルでそこそこ元気に走っても、組み付け時のクリアランスにキャブや点火時期の設定で余程外したセッティングでもしない限り、スリーブが裂けたりエンジンブローしたものは無かったです。
だからこそピストンメーカーはここまで組み込み可能と設定はしているのでしょうが。
但し、消耗の仕方に関して言えばピストンやピストンリングが寿命になる前にスリーブが偏摩耗したり変形して限界を迎える場合が普通で、肉厚を残したボアサイズのものに比べると寿命的には劣ります。
 
そこで、スリーブの厚さによってどの程度剛性が変化するか、簡単に比較してみます。
上記の3種のスリーブは材質もサイズも異なりますが、摩耗度はともかく剛性の違いの参考になるかと思います。
 
ボアゲージの角度や当て方がなるべく変化無い様、スネークと呼んでいる固定具でこれを保持します。
作業中にゲージが揺れて、それが数値に出ない様にする為です。
イメージ 5
 
これでスリーブの下端サイズを測定しながら指で軽く押してみます。
イメージ 4
 
Z1用純正ボアのもの
外径73.4mm 片肉3.7mm
 
ゲージの最少メモリは1/100mm。
以外に思われるかも知れませんが、厚さが結構ある純正のZ1ボアでも軽く指で押した程度で2/100mm弱程も直径に変化が生じます。
 
 
PAMSスーパーターカロイスリーブ72mmボア用
ボーリング前で内径71.5mmで片肉3.25mm 
 
これは、材料メーカーよりスーパーターカロイの名前で供給されているものを使用しています。
ボーリング前の現状でもZ1の純正より薄くて外周も大きい為に数値的には不利になる筈なのですが、指先の感覚的には固くて変形しにくく感じます。
押す力を数値化して無いので単純比較は出来ませんが、ゲージの振れ幅は小さいです。
 
問題のZ1000純正73mmボーリング済みスリーブ
片肉1.2mmのものです。
上の2本と感覚的には同じ程度の力で指3本で軽く押しているだけですが、最大で40/100(0.4mm)程度もゲージが振れています。
 
ボーリングの際にピストンのスカート部とスリーブとの間に取るクリアランスが4/100~6/100程度である事を考えれば、指先で生じる40/100などという数字がどれだけ大きな問題か想像出来ます。
 
作業している私は10円玉を指先で折り畳める様な怪力の持ち主ではありません。
以前事故に巻き込まれて左手首を負傷した経験もあり、むしろ他の人より握力は弱い方ではないかなと思います。
  
もちろんスリーブはブロックに圧入されて外周部分は押さえられていますので、その状態で測ればここまで大きく変形する事は無い可能性もありますが、それにしても上の2つのデータとの20倍以上の差は無視出来るものではありません。
全開で廻るエンジンの中で、回転方向に首を振ろうとするピストンスカートで生じる側圧が、私の指先より弱いなどとは思えません。
 
今回は測定するのにスリーブが単品になっているものしか無かったのですが、機会があったら、ブロックに圧入された状態での変形度も是非とも測ってみたいものですね。

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