地味なパーツばかりをリリースしている私達ですが、基本は「自分たちも必要」という観点がスタートになる場合が殆どです。徐々にラインナップを拡大しているESTスリーブもその一つです。
私の知る限りESTシリンダースリーブに使用している鋳鉄素材は一般的には余り出回ることの無いもので、その成分も応力を抜き落ち着かせる為の「寝かし期間」も全く異なっています。実は、企画製作の量産段階時点でギリギリになって最新最高の素材として使用が可能になったものですが、製作コスト上昇を覚悟の上で採用しました。
組み込んでしまえば外から目に見ない上、見た目に明確な違いを見出す事の難しいシリンダースリーブなのですが、耐久性を筆頭にエンジン性能を大きく左右する重要な部品である事は間違いありませんから。
さて、発表と同時に初期ロットが完売した為、バックオーダーでお待たせしておりましたESTシリンダースリーブのZ1用オーバーサイズが入荷しました。
オーダーいただいていたお客様に順次発送中です。
このオーバーサイズは、純正シリンダースリーブが緩んでしまったブロックにも対応出来る様、ブロックとの当たり部分を外径で0.5mm大きいサイズにしてあります。
長年使用されたシリンダーブロック側は穴径のみでなく、真円度が狂ってきていたり内壁が荒れているものが多い為、軽く修正ボーリングを行ってから圧入していただく事で、新品ブロック時の精度を回復出来ます。
スリーブ内径は66mmのZ1純正ピストンに対して65.5mmと、最小限のボーリングとホーニングで加工時の精度の向上と加工コストを抑えられるようにしました。
外周に施された銅メッキは、緩んだスリーブのクリアランスを埋める目的の物ではなく、ブロックとの密着と熱伝導性を狙ってのものですので厚付けではなく極薄です。
正しいクリアランスで圧入された場合はあまり必要は無いのですが、純正でブロック下部に装着されるOリングも入れられるようになっています。
この為ビッグボアスリーブと異なり、この部分が2段になっています。
では、具体的に一般的素材から削り出された鋳鉄スリーブとどの程度耐久性等に差異が認められるのか?という事になりますが、耐摩耗性では純正当時の素材の倍はあると、メーカーから言われる逸品です。
正しく使っていれば一体何年持つのでしょうか?使用状況にもよるでしょうが、これが最後のエンジンオーバーホールにする事も可能かも知れません。
さて、素材の寝かしの関係で今回も大量には製作出来ておりませんが、純正サイズライナーが緩んでしまっている様な懸念のある方はお早目にお問い合わせ下さい。
手で押して抜けないブロックでも、X軸はOkでもY軸方向はスカスカなんて事がありますから注意して検証する必要があります。
又、ビッグボア用も新しく他のサイズも製作したので、順次紹介します。