何だか年末という気分が今ひとつ湧いてこないのですが、納車物は昨日までで完了し、今日は今年最後のエンジン分解となった2台をUPします。
先ずはMK2です。以前にもエンジンOHを受けている個体ですが、油温の上昇やギア抜け等の気になる所が重なり、再び分解という事になりました。
排気量・圧縮比がノーマルから大幅にUPされており、それ以前よりも油温の上昇が気になるのはそのせいかもしれません。オーナーさんに使い方、乗り方をお聞きするとパワーよりも信頼性、耐久性、扱いやすさを求めており、今回は逆にSTD排気量に戻す事を提案しようと思っています。4輪では今流行りの「ダウンサイジング」ですね。
クランクケースを割った所です。見たところ大きな異常はありませんが、これから全て洗浄後に分解検証です。
一通り、大筋の分解作業が終わったところです。
クランクシャフトですが、ピストンPIN同径のスチールバーを各スモールエンドに通して簡易的な位相ズレのチェックですが・・・何となくMK2ではあまり嬉しくはないお約束となりつつあるこの状態。正直、結構無視出来ないズレなのですが、実際には皆さん気付かれる事もなく普通に乗っていらっしゃるんです。勿論、ズレていないに越した事はないのですが。
もう一台は1100Rです。今回の入庫はアイドリング不調、そして高回転までスムースに吹け上がらない等。そして酷い白煙とオイル消費です。
言わずと知れたカワサキが世に送った空冷Zの最終ウェポンの一台。見た目に1000R系と被りますが、特にエンジンに関してはほぼ別物と言って差し支えございません。なんとヘッドもピストンもクランクシャフトも専用設計。故にJ系とそれらエンジン大物パーツを共用出来ないという辛さもあります。
現オーナーさんのがご所有されてから短期間で2度にわたりエンジンOHを受けたとお聞きしましたが、ヘッドカバーを開けるといきなりカウンターパンチをくらいました。見た目にも明らかに本来のボルトとは異なる物が使用されています。画像にはございませんが、ボルトの太さも長さも全く違う物が無理やりねじ込まれています。
こちらも御覧の通り。そして16本あるカムホルダーボルトの内、約半数は殆どトルクが掛かっていません。トルクが掛からないのではなく、掛かっていない状態。それ以外では規定トルクを掛けたくてもトルク抜けしてしまう箇所が数か所。カムホルダーボルト雌ネジのコンディションとしてはBADにランクされる状態です。しかし、大事に至らずこのタイミングで発見されて不幸中の幸いとも言えます。
ヘッドを下し1・4番ピストンが顔を出しました。社外の鍛造ピストンにてビックボア化されています。しかし懸念事項の一つであったオイル消費を物語る様に、ピストンヘッドは御覧の様な状態。リセスにオイル溜まりが出来る程です。
2・3ピストンも同様です。シリンダー壁にも必要以上にオイルが纏わりついているのがわかります。
シリンダーブロックを引き抜いたところです。とにかくどの気筒も「オイルまみれ」といった印象。
オイルをサッと拭ってみます。全体にスカート付近に出来た細かい縦傷、そして走行距離の割には異様に摩耗したラビリンス(溝)が気になります。
そして同じく走行距離を考えると4気筒全てにおいて、ピストンPINの異常な段付き摩耗も気になります。
こちらも洗浄後に検証となりますが、作業再開は年明けからになりそうです。
さて、明日は今年最後の営業日(大掃除)となりますが、最後まで気を引き締めてゆこうと思います!