これは、KZ1000,Z750D1~MK2,Z1-Rのリアディスク仕様車スイングアームのピボットスリーブ。
既に廃番欠品になっている部品です。
どちらも左右スリーブとセンターカラーが一体化されて剛性面では確かに有利です。
下の片側ベアリングが1つのものは初期のZ1000のもの。
Z1径から変わらないピボット径の為に圧入してあるベアリングが小さく、増加した車重とパワーに対して片側1個では負担が大きかった為か、後に上の片側2個仕様になりました。
ただ、ベアリングを増やして負荷が分散されたのは良かったのですが、今度は一体型のスリーブが災いしてベアリングの当たりや摩耗が均一になり難く、又、フリクション面ではちょっと不利な一面があります。
ベアリングが当る部分のアップを見ると、4つ入る後期型は均一に摩耗していないのがわかります。
何でこんなことが起こるのか。
鉄製スイングアームの構造を見れば判るのですが、ピボットパイプの片側に溶接パイプとガセットプレートが集中します。
もちろんなるべく歪みは起こらない様に溶接する場所の順番も考えられて作業されているのはもちろんですが、どんな溶接の名人が作業を行おうが物理的な法則に逆らう事は出来ませんので、歪みが皆無になる事はありません。
寸法的な問題が無い範囲ではありますが、純正スイングアームのピボットは上の写真の両端がほんの僅かに下がる様に反っているのが普通です。
この為、片側にベアリングが1つずつであればさほど大きな問題にはなりませんが、2つずつ並べて入れると4つのベアリングが完全に直線上には並びません。そこに一体式のスリーブを通した場合どうしても動きが悪くなってしまいます。
もちろんスイングアームを溶接組み立てした後でピボットベアリングが入る部分をボーリング加工すればこういった問題はもちろん起きませんが、量産性が半端でなく悪くなります。
そこで、Z以降のJ系スイングアームでは、ピボットパイプを太くしてベアリングを大型化する事でスリーブとの当り面積を確保。 更にピボットスリーブとカラーは再度分割化されて動きを優先した設計に変更されています。
剛性重視で一体化する事が常に正しいというわけでもなかったという事です。
これはデリバリー開始したリアディスクZ用のピボットベアリングセット。
ノーマルのスイングアームであればベアリングは4つ入ります。
スリーブとカラーを一体化するより、あえて分割してセンターカラーやスリーブの精度と強度を上げて剛性を確保し、動きのスムーズさとの両立を狙っています。
こうする事で、一体式に対して分割式のスリーブには均一に荷重が分散されるので、MK2系の純正の様に編摩耗も起こしませんし、実際スイングアームは軽くスムーズに動く様になります。
PS:
J系より高年式の大型車両で更にピボットパイプ部分が太くなったスイングアームでは、ピボットの反りが少なくなるのと、ニードルベアリングをチェーン側は複列にして反対側はニードル1個とスイングアーム自体のスラスト位置を決める機能を持たせるボールベアリング化。
この状態でニードルベアリング3個を通すのであれば当り面や動きの問題もクリアできるので、スリーブからカラーが一体式のものも復活しています。