加工仕上がりした、Z1000クランクケースです。
今回はシリンダースリーブを74mm迄拡大可能なものに交換しますので、それが入る部分の穴を拡大しています。
この穴に入るZ1000の純正スリーブの下側外径が約75.5㎜
今回使用するESTシリンダースリーブ72-74の同じ部分の外径は78.2㎜。
直径で2.7㎜、半径では1.35mm大きくなるわけですが、削り幅は可能な限り少ない方がケース剛性は確保出来、シリンダーブロックとケース間のガスケット咥え幅を残す事でオイルリークの可能性を減らせます。
又、当社製のカーボングラファイトガスケットで芯材をスチールとしたものを使用した場合、シリンダーよりケースに向かって積極的に熱を伝えて冷却効率を上げる事が出来るのですが、それであれば接触面積を可能な限り確保するのが望ましいです。
そこで、スリーブ交換したシリンダーブロックの現物に合わせて、挿し込まれたスリーブとケースが接触しないギリギリの寸法で加工しています。
挿入するスリーブが上記の通り直径78.2㎜のところ、ケース側の穴径は78.5㎜。
接触はしませんが、クリアランスは片側0.25mmと最小限です。
これぐらいしか削らなければ、オリジナルの穴も切削される部分は非常に少なくなります。
ベースガスケットを挟む上面については、最も大きく削れる部分で0.5mm程度位です。この程度であればノーマルのZ1000に対してオイルリークの可能性が高まると言った事も無いでしょう。
たまに、余裕を持たせ過ぎな極端な下穴拡大でガスケットを挟めなくなってしまった様なチューニングエンジンを見る事があります。
削ったものを元に戻すのはコストと手間を考えれば事実上不可能です。
(極上の同じ仕様の中古ケースを何個分も買える以上のコストがかかってもかまわんと言うなら話は別ですが、現実的ではありません)
使えるケースを粗大ゴミにしない為にも、この部分の加工は慎重にする必要があります。
ちなみにオリジナルのスリーブが外径が若干小さいZ1系ケースは元々の穴も少し小さい為、同じサイズのスリーブを入れる為に加工するとこれ位の削れ幅になります。
この為一見大幅に削っている様に見えますが、もちろんこれも最小限にしていますので、上のZ1000とほぼ同じ程度のケース厚は残っています。
ケース側の穴の中心がスリーブの中心と言うわけではありませんから、最小限で削った場合はこのサイズでも削らずに済むところがあります。
これが使用するものと同じサイズのスリーブを入れたシリンダーブロック。
下側から加工された肉抜きの穴や、スタッドボルトを通す為の穴は結構大きいので、雑に拡大加工するとガスケットが挟めなくなるのがわかると思います。