大量のオイル消費と白煙発生その他で入庫した1100Rのクランクシャフトです。当初腰上だけの手直しで済ませる予定でしたが、ピストンを抜き去った所でコンロッドに触れてみるとこの状態です。(BGMが煩くてすみません)
既に目視でもコンロッドのサイドスラストクリアランスが過大という事が解ります。その他気になる所も散見され、結局腰下まで割る運びとなりました。
上はマニュアル表記ですが、0.30mmから0.40mmが標準値で0.60mmを超えると使用限界値となります。
シックネスゲージを使ってクリアランスの測定。既に手感触でも想像出来ていた事ですが、結果も各コンロッドで最も最少値でも0.45mm、最大値は0.60mmを超えてしまいました。すなわち、マニュアルの記述通りに従うのならば、このクランクシャフトはサイドスラストクリアランスだけ取っても、既に「使用不可」という事になります。
また、各ベアリング上での「フレ値」についても最大で0.2mmです。
因みにフレについては標準値が0.04mm以下で使用限界値が0.1mm。ですからこちらも大幅に使用限界を既に超えてしまっています。ごく当たり前の使用でここまでフレが大きくなる事は考えにくく、修正を施しても望む数値まで追い込めないか、仮に追い込めたとしても他の箇所にしわ寄せが行く可能性のある数値です。
そしてPIN溶接が施されていますが、この溶接はつい最近行われたもので、既に上記の様なコンディションを承知の上で補強溶接されたものなのかが疑問です。
では、使用限界値を超えたクランクでは走らないのか?と言えば、走ります。事実この1100Rも自走にて入庫したわけです。ただ、その排気量は社外ピストンにより1160ccまでボアアウトされ、STDよりも遥かに大きな力を受けるであろうクランクの状態としては、素直にOKが出せるものではありません。
ただでさえ上物USEDクランクシャフトが入手困難となった今、1100Rとなれば尚の事それが難しくなります。幸いな事に良き協力者に恵まれ、極上物のUSED
クランクを確保する事が出来ました。ここがダメだと次に進めませんから。