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J系マグネットローター

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整備の為にジェネレーターカバーを取り外したZ1100GP。
イメージ 1
 
良く見ると磁束発生の為のマグネットにクラックが入ってしまっていると思いきや、
その殆どがローターから剥離していました。
イメージ 2
 
磁力と遠心力で何とか定位置に収まっていたのが幸運でした。
ステーターコイルとのクリアランスは僅かなものですので、万が一にも走行中に引っかかりでもしたらエンジン全損にも繋がりかねない危ない状況です。
 
Z1より始まり改良と対策を施されながらJ系へと進化したZ系ですが、性能アップに対して対策が追い付かずに生じてしまった弱点が無いわけではありません。
その一つがこのマグネットの剥離です。
Z1000Mk2より採用されたアウターローター方式のマグネットは、インナーロータータイプの鋳造では無くローターの内部に接着剤で張り付けしてありますが、これが走行条件によっては剥がれてしまう場合があります。
 
原因は、マグネットとアウターローターの熱膨張差。 又、マグネット自体が結構大きいので、回転方向への慣性が強くかかるのも原因の一つでしょう。
Mk2でもたまに剥がれたのを見る事はありますが、J系で圧倒的に多くこの症状が見られるのは、発電容量をアップさせる為に大型化されたマグネットローターが原因と個人的には見ています。
外周方向に大型になれば膨張差も慣性もその分大きくなりますから。
 
さて、この症状はカワサキも無視できないレベルでの頻度で起こったらしく、Z1000Pまで含むと25年も生産する途中で対策しています。
 
これは、対策されたJ系マグネットローター。
初期から2000年モデルまでのJ系に適合するタイプ。
イメージ 3
 
少し見難いですが、マグネットが6分割化されています。 細かく分ける事で、膨張差によって生じる剥離を防止しようとしている様です。接着剤樹脂自体も変更され、劣化し難いものになっています。
現在J系様マグネットローターをオーダーすると、このタイプが届きます。
レギュレーター等もそのまま使えますが、発生電圧をオシロスコープで見ると違いがあるのがわかります。
 
参考までに、クランクエンドにマグネットローターを取りつけるタイプのジェネレーターは、エンジン幅の増大とクランク廻りの重量増加となる為に80年代半ばより10年程の間に基本設計されたバイクエンジンの殆どは、エンジン背面に車の様なタイプを装備するものが中心になりました。
 
ところが90年年代後半になると、それまで一般的だったフェライト系の磁石より軽量小型でも磁束密度の高い希土類磁石(ネオジムとかサマリウムコバルトとかの名前を聞いた事ある人もいるでしょう)をマグネットローターに使用する事で、ジェネレーターは再びクランクエンドに戻される様になりました。
部品点数も少なく構造がシンプルになり、背面に独立したジェネレーターに動力を伝達する為のロスも生じないからです。
 
カワサキのスーパースポーツで言えば、ZX-9Rは1997年までのB型は背面タイプ。
翌98年からのC型でクランクエンドタイプになり、現行のZX-10Rに至るまでそのままです。
 
これらは最近のスーパースポーツに使われているマグネットローター。
イメージ 4
イメージ 5
イメージ 6
 
インジェクションが基本装備でより多くの電力が必要なのですが、J系のそれに比較すると薄く軽く作られているのが判ります。
又、高回転に耐える為もありますが、磁石の保持方法は金属リングによるパッケージタイプに変更されています。(一部樹脂も併用しています。)
 
元エンジンの設計が80年代のゼファー1100やNinja系のZRXなんかはずっと背面ジェネレーターのままですが、カワサキが次世代空冷エンジンをちゃんと作るなら、コンパクトかつシンプルなクランクエンドタイプを採用して来るのでしょう。
 
むしろそれ位腰を据えて完全新規新作でやってよってのは私の個人的な希望ですが。

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