先日複数のお客様より「カムライン修正」ご質問を頂いたので記事にします。
数多くエンジンに触れる機会のある方なら、一度位は遭遇したと思われるカムラインの狂い。目で見て解るものではございませんが、規定トルクでカムホルダーをSETしているのにも関わらず、異様にカムの回りにフリクションが発生します。少々キツイ程度なら、実際には走ってしまうのですが、酷い物になるとそのフリクションが邪魔をして、カムメタルやカムジャーナルの消耗、アイドリング不調等の問題が発生する事があります。
そうなる理由としてヘッド自体の歪(オーバーヒート等による)もあるとは思いますが、最も疑われるのが「カムホルダー」の入れ違い。ここで言う入れ違いとは、他のヘッドの物がなぜかどこかで入れ替わってしまったというお話です。それがたまたまどこかで混ざってしまったのか、または何らかの理由でホルダーが破損し致し方なく他のヘッドから移植されたのか。理由は様々でしょうが、とにかくカムホルダーは同一車種であっても、その加工工程上そのヘッドと一対物が基本です。ですから4個あるカムホルダーにはそれぞれに1~4番までの番号がふってあるわけです。一対にて真横からズドンとラインボーリングされていますから、他のヘッドから移植されると微妙にカムラインにズレが生じるわけですね。
じゃあ、ラインボーリングのやり直しで修正すれば?と思うのですが、長くなるのでその理由は割愛しますが、様々な理由で今一つ現実的ではありません。
従って、OH時に酷いカムラインの狂いがあった場合には、本来ならば程度の良いUSEDヘッドに交換する事が望ましいと思うのですが、コスト的な問題を始め、例えば初期型ヘッド等ではその代えも中々見つからないのが現状だったりと、どうしてもそのヘッドを生かす方向を選択せざるえない時もあります。ではその場合どうするか?
過去の記事にも何度かUPしているかと思いますが、専用のTOOLにて「カムライン修正」を施します。これはラインボーリングとは異なり、簡単に言うとカムラインの狂いによりアタリの強くなった部分を最低限削り取り、フリクションを取り除くという作業です。ただし、あくまでもアタリの強い箇所を取り除く事がこの作業で本来のカムラインがラインボーリングと同様に確保できたわけではありません。
人間の体で言うところの対症療法的な作業ではありますが、旧くなった空冷Zには時としてこの治療方法を選択するときもあるというお話でした。