チューニングエンジンで初めて使うピストンの場合は、そのヘッドボリュームを実測してデータ化する様にしています。
設計標準にされているガスケットのボア内径と厚さ、カタログ上に書いてある圧縮と標準燃焼室容積から逆算する事ももちろん可能ではあるのですが、実際に測ると計算通りにいかないばかりか、カタログスペック通りの圧縮設定になっていない場合も少なからず経験がある為です。
ちなみに今回使ったピストン、純正のZ1系のピストンピン上ハイトが16mmであるのに対し、16.15mmありました。
これは例えばオリジナルのシリンダーブロックに組み込んでやるとブロック上面から0.15mmピストンが飛び出すという事になります。
これを念頭においてデプスゲージを使い、正確にピストンを沈めた状態で液体を使用して容積を測ります。
ピストンを上死点位置から正確に10mm沈め、ボア径×10mmの容積から注入した灯油量を差し引いた値がヘッドボリュームとなります。
基本はサービスマニュアルに記載されている方法と大差はありませんが、当方が行う場合は注入量を正確に見れるビュレットと灯油を使用しています。僅かずつしか入りませんので少々時間はかかりますが。
燃焼室容積は、内燃機加工後に実測したシリンダーヘッド側の容積とガスケット厚さによる空間容積を足して、このヘッドボリュームを差し引く事で得られます。
更に、シリンダースリーブの交換やクランクケース側の当たり面を面研等行っている場合、その面研量を測定してヘッドガスケットやベースガスケット厚を調整する様にします。
さて、これらの作業や計算を行わなくとも動くエンジンはもちろん組めます。
やらなければチューニングエンジンにならないのだなどと傲慢な能書きを垂れるつもりもありません。
但し、狙った圧縮比仕様のエンジンを組んだり、仕上がったエンジンのデータを次回以降の整備や仕様変更、別のエンジン個体を組む際に使えるものにする為には必ず必要になります。