整備入庫車両のエキゾースト固定に使用されていたナット。
高温に晒された為に若干焼け色がついてはいるもののステンレス故に”表面は”錆びついてはいませんが、しっかりとかじり付いて緩めようとしても動きません。
何とかなだめすかしながら無事に取り外す事が出来ましたが、作業中スタッドボルトが折れたらと結構気を使いました。
何せ8mmのスタッドボルトは6mmのものよい1ランク以上硬い素材の為、それでも折れたらエンジンを搭載したままハンドドリルで揉み取るのは結構苦労します。
(曲げて折るのに結構力が必要な硬いボルトでも、動かないものを捩じればいとも簡単に切れます)
ステンレスやチタンのボルトやナットは見た目にこそ錆びにくくはあるものの、熱伝導性の悪さと分子的な滑りも悪い為、特に膨張収縮を繰り返す部分に使った場合は鉄に比べると非常にかじり付き易い特性があります。
赤く錆びるスチールのナットやボルトを嫌って美観重視もしくは軽量化の為にこれらの素材を使う場合は、ネジ部分にスレッドグリスを塗布して組み込む等の対策が必要なのですが、以外にも守られている場合が少ない様です。
機能と軽量化を極めた本格的なレーシングマシンの場合、チタンのボルトやナットのネジ部に予め表面処理を施したものを使ったりします。 又、車両組み立て時には一本一本にスレッドグリスを塗布して組み立てるのが基本で、これがステンやチタン同士だったりしたらなおさらです。
どの位特性が違うか知りたい場合は、完全に脱脂洗浄したボルトやナットを締め比べればすぐにわかります。
鉄の場合は馴染んだ感覚で締まりますが、一般的な市販ステンレスやチタンの場合は滑りが悪くてギチギチと非常に嫌な感触がします。
ボルトが転造品の場合は多少ましですが、それでも基本的な特性が変わる事はありません。
勝つ為の軽量化というメリットを手に入れる為に手間と言う代償を払っているわけですが、手間を省いたりもしくは忘れるとネジの固着というデメリットやリスクの方が大きくなります。
万が一にもステンレスやチタンのボルトが折れ込んだりすれば、刃物の食いが強烈に悪い素材特性ゆえハンドドリルで綺麗に揉み取るのは上記の鉄ボルトとは比較にならない程困難です。この為ヘッドを外して加工機で削り取らざるをえない場合があります。
メリットもリスクも知った上で使うのはもちろんOKですが、リスクやケアの方法を知らずに使うのはおすすめしません。