シリンダーヘッドを外した際に確認しておきたいのが、センターシール部分の溝深さ。
オリジナルのシリンダーブロックの場合の深さはおおよそ2.3~2.4mm程度。
ブロックを鋳造する際に一緒にモールドされているので多少幅がありますが、この深さを測ってこの数値より大幅に少ない場合、スリーブ交換を複数回行われている等の理由で何度かシリンダー上面を切削研磨されている可能性が高かったりします。
このブロックの場合、既に何度か上部を面研されている様で、デプスゲージで何か所か測った平均が約1.5mmですので、少なくとも0.8mm程度ブロック高が薄くなっていると想像出来ます。
実際にブロックを取り外して高さを測定したところ、標準高89.55mmより0.9mm薄くなっていましたので、上部下部共に面研されているものと推察しました。
これらの数値を組み入れてガスケットの選択を行わないと、センターシールが潰れ過ぎて破断したり、本来組みたい圧縮より上がり過ぎてしまったりしますので注意が必要です。
当方の経験上、センターシールの径が約4.0mm、シールの圧縮率から溝深さとガスケットを足した寸法が3.0mm程度を切らない範囲で組むのがセンターシールの寿命を考えると望ましいです。
市販ピストンキットの多くに付属しているヘッドガスケットの組み込み厚さが約1.1mm。それを使用してそのまま組むとシールの潰し高さは約2.6mmとなってシール破損の可能性が高くなったり、ブロック高が低くなっている分ピストンが上方になりますので想定外に高圧縮のエンジンになります。
例えば本来ボア73mm圧縮10.25:1の設計のピストンだったとすると、それがピストンが上がった分で11.73:1になるわけです。カムの設定にもよりますが、低速トルクは出ても思ったより回転上昇の鈍いエンジンになったり、点火時期を10.25の圧縮のつもりで設定して走行するとノッキングの発生でエンジンを破損させてしまう可能性も出てきます。
さて、このエンジンの場合はピストンヘッドボリューム、バルブシートカット後の燃焼室容積を実測した上で通常より厚いものを使用して想定した圧縮比に調整します。