Z1000Rのオリジナルシートです。
座面表皮のディンプル状のシボ具合が結構複雑なパターンで、入っている縫い目も熱転写のパターンでは無く実際に糸を使ってあるものです。
この為雨に降られると水が浸みこんでしまうと言う殆ど欠陥品じゃないかと思えなくも無い特徴があるのですが、この手の込み方が結構自分も好きです。
カワサキはシートレザーが部品で設定されていて、この部品も以前は入手出来たのですが、さすがに新車から30年以上経った今では貴重なオリジナルです。
社外品のレザーも販売されてはいるのですが、さすがにオリジナルの複雑なパターンは再現されておらず、座面の縫い目もプレスで再現されたステッチ風パターンの為、並べると明らかな違いがあります。
さて、このシートは個体として相当に程度の良いものなのですが、さすがに年数を重ねるとシボ目に汚れや表皮の硬さが出てきます。
更に、Z1000J系の様に脱着出来るシートにありがちなのですが、うっかりエッジ部分を押し続けたりするとこの様に切れ目が入ってしまう場合があります。
この小さな切れ目が結構気になりますし、補修のついでにレザー全体の汚れと艶の不均一さによる使用感も目立ってきていますので、これを綺麗に出来ないかと以前から気になっておりました群馬の革再生工房さん にお願いしました。
こちらではオリジナルのシートレザーを交換ではなく補修したり、風合いを再生する事が出来るそうです。
通常、切れたり裂けたり表皮の風合いの痛んだものを完全に綺麗にするなら、シートレザーを社外品の新品に交換してしまうのが手っ取り早いですし、安価なシートレザーの設定されている車種についてはコスト的にも安価で出来る場合がありますが、このZ1000Rの様にオリジナルレザーのパターンや風合いを残したいと思うものには心強いです。
仕上がり後、上の写真と比較すると全体的な艶や色味が均一になっているのがわかります。
座面の細かなシボに入り込んだ汚れも除去されて、しっとりした風情が復活しました。
比較の為にこれが作業依頼前
これが作業完了後
テール部分の裂けも表皮を樹脂で埋めて補修されています。
一度この部分をめくって、裏側からも補強されたそうです。
ここを直しましたと言われない限り、普通にシートを一見してもわからないレベルです。
座面の綺麗なシートは、車両に装着すればまた一段と様になるかと思います。
シートの交換や張り替えではなく、あえて元々のものを使いたいと言う場合にはこれも立派な整備ですね。