ボーリング加工仕上がり済みのピストンとシリンダー。
当然の事ながら加工時にクリアランスは測っていただいてはいるものの、自分の手でも再度測定を行ってデータを残します。
組み付け後に万が一の不調が起こった際の参考にもする為です。
測定前に標準器を使ってマイクロゲージを校正
これでゼロ合わせします。
ボアやピストンの絶対径数値を出すのが目的ではなく、知りたいのはクリアランスなので極端に深刻になる必要は無いのですが、習慣です。
これでピストンのスカート部分、下端から約10㎜のところで測定。
ピストン下に木を敷いているのは、ステンレスの作業台上に直接スカート下端を当てたくないのと、1段高くして横からマイクロゲージを当て易くする為です。
デスクの端にピストン置いて横から測定して、ピストンを落下させる様な想像するのも恐ろしい事態も避けられます。
マイクロゲージをホルダーで固定して、これでボアゲージを調整。
シリンダー内壁を測って差分のクリアランスを測定します。
ついでにデプスゲージでカムチェーントンネルのOリング溝深さを測定。
ブロック上面の面研を繰り返すと、この深さが薄くなってガスケットの厚さによってはOリングの変形量が大きくなり切れたりするトラブルの原因になったりしますから、面研後には点検が必要です。
ここの溝は鋳型で作られていますので、完全に平均した深さでは無いのですが、今迄のデータではオリジナルは2.0~2.4㎜程度。2mmを超えていればまず問題無いでしょうが、2.0㎜深さの場合で厚さ0.9㎜を切るガスケットを使用するとOリング破断の可能性が高くなってきますから注意が必要です。
又、ブロック各部の高さも測ります。
過去に施された面研が平面が出ていなかったりする場合もありますので。
さて、通常のエンジンを測る場合のクリアランス値1/100㎜目盛のゲージを使って5/1000㎜代までを現実的なデータをして使っています。
1/1000㎜まで測定してデータ化する事も出来ますし、そこまで測れる測定器も保有はしていますが、1/1000単位までデータで使うとなると気温が若干変化したり測定するピストンを触っているだけの熱でも数値が変化する位になりますので、特殊な場合を除いてはそこまでのデータを採るのは現実的では無い場合があります。
例えばこの写真では66.452となっていますが、これにふーっと息を吹きかけると1/1000位の数値が冗談抜きに変化します。もたもた測っていたらきりがありません。(笑)
知人のメカニックには恒温室を用意して1/1000㎜台まで測ってエンジン組む人もいます。本人曰く
"ただの自己満足。そこまでやっても公道レベルじゃまず変わらんのだけど、ここまでやってるんだからいいエンジンになるんだって気になって楽しいからやりたくてやってるだけ”
と笑います。彼も実際にやってみての結論なんでしょうね。